今月のかわら版では賃貸経営の経費について掘り下げたいと思います。経費は節税に繋がるイメージが強いですが、そもそも不動産投資の世界では何が経費になるのかよくわからないという方が多いと思います。賃貸大家にとって経費として落とせる費用を具体的に紹介していきます。
大まかな経費一覧
不動産投資で認められる経費は大きく分けて8つに大別できます。
- ローンの金利
土地、建物、設備の元金は経費として落とせませんが、利子の支払い部分は計上可能です。例外として、不動産所得が赤字の時は土地部分の利子は計上できません。
- 保険料
建物にかける火災保険、地震保険や入居者のための孤独死保険などは経費計上が可能です。
- 管理委託料、管理費
建物管理を委託している大家さんは管理委託料を経費として組み込めます。エレベーターの保守や消防点検の費用も計上出来ますが、管理会社を通さずに費用を支払うケースもあるので請求書を確保しておきましょう。
- 入居者募集の為の費用
賃貸仲介会社に支払う仲介手数料や広告宣伝費がある場合は計上出来ます。他には、申込を誘うための入居者へのプレゼントや商品券も交際費というカテゴリーで計上できるので活用すると良さそうです。
- 修繕費
不動産の修繕、主に原状回復、設備故障の修繕や交換費用がこれに含まれます。資本的支出と修繕費は混同しやすいですが、修繕費は故障した部分を修理するための工事(修繕費用が20万円以下に限る)、資本的支出は単純に不動産の価値を高めるための工事となります。前者は工事をした年に一括で経費計上出来ますが、後者は数年に渡って減価償却することになります。
- 税金
不動産に係わる税金は計上可能ですが、所得税、住民税、法人税の3つは計上不可なので注意しましょう。
- 専門家への報酬
司法書士への登記依頼、税理士への確定申告依頼や弁護士に依頼する家賃滞納者などに対しての訴訟の報酬がこれにあたります。
- 旅費、交通費
不動産購入の目的のためにする現地訪問、不動産会社訪問、決済や面談の為の金融機関訪問、所有物件の現状確認などの理由での出費は経費として計上ができます。注意点としては、不動産に係わるか否かが基準となるので、不動産に関連しない方々との食事や自分1人での食事などは認められません。
どの経費が重要?
減価償却費を最大限にして、減価償却費以外を最小限に抑えるのがベストだと一般的には言われています。
減価償却費は通称「実際のお金の出費が伴わない費用」と呼ばれており、文字通りお金が財布から出ていくことはありません。しかし、減価償却費を決める償却率は建物の構造などによって決められており、購入後に大家さん側が減価償却費を増減させることは原則できません。
減価償却費を増やしたい時は、 新たに物件を買う際に土地と建物の価格を合計した中で、建物価格の割合を常識の範囲内で最大化することによって支払う不動産の取得費用を増やすことなく減価償却費を多く計上することができます。この方法を実現するためには、売主側との交渉が必要なことを留意する必要があります。
上記は物件を購入する前の話でしたが、既に物件を所有している大家さんにも節税の方法が残されています。それは不動産の価値向上のための工事です。エアコンなどの設置による資本的支出は最初こそ資金が掛かりますが、減価償却費として毎年経費に組み込むことが可能です。
さらに居住環境の改善は入居者保持や入居付けの要因となります。賃貸大家にとって最も避けたいのは空室です。それを最大限に減らすための投資と考えると修繕、資本的支出はメリットとなります。ただし最も気を付けなければならない点は、手元資金がなくなってしまうことです。経費として後々に節税できるとはいえ、最初は現金で払うので資金が減りすぎることがあるため、今ある資金とよく相談することが大事です。
計画的な経費プランを
ここまで経費について説明してきましたが一言でまとめると「事業の運営に関係する費用かどうか」が焦点となります。インボイス制度の導入や贈与税の改正などによる政府の引き締めが強くなってきています。この記事を読んで、少しでも節税できるよう経費を意識して日々を過ごして頂ければ幸いです。