2024年から住宅ローン控除が改正

税金

住宅ローン控除とは

住宅は多くの人にとって人生で最も高価な買い物です。また、住宅の購入により引っ越し業者やインテリア業界、家電業界など様々な業界に経済効果をもたらします。

経済を活性化させる住宅の購入促進のために住宅ローン控除があります。正式には「住宅借入金特別控除」といいます。ご存じの方が多いとは思いますが住宅ローン控除は、国に納めるべき所得税が住宅の取得により一定期間、住宅ローン残高に応じ控除される制度です。住宅ローン控除の前身である「住宅取得控除制度」が導入されたのは1972年。当初、適用対象は一定の新築住宅取得に限られ、また、ローンの有無を問わない住宅床面積に応じた税額控除でした。減税額は小規模で、導入当初は、年間最高2万円、控除期間は3年、最高限度額は6万円で1977年までの6年間実施されました。

1981年には、それまでは新築住宅取得のみを対象としていたものが、中古住宅の増加に伴い、中古住宅の取得まで拡大されました。

その後、毎年の住宅ローン残高(原則4,000万円)の1%にあたる金額を10年間に渡って所得税から直接差し引くことができ、一般住宅の場合10年間で最大400万円(年間40万円×10年)安くなりました。また、所得税で控除しきれない分は、住民税からも控除する事が出来ます。

住宅ローン控除から少し話がズレますが、2014年には消費税が5%から8%へ引き上げに伴い、新築住宅か中古再生住宅(不動産業者等がリフォームして再販する物件)の購入時の消費税負担軽減のため「すまい給付金」が開始。住宅取得の支援として、住宅消費税が8%の時には最大30万円、10%の時には最大50万円が給付となりました。

話は住宅ローン控除に戻り2019年には消費税8%から10%引き上げに伴い、住宅ローン控除の期間が10年から13年に延長される住宅ローン控除の特例が導入されました。これにより10年目までの最大400万円に加え、11~13年目の3年間で最大80万円まで控除できるようになりました。(中古住宅は10年のまま)

しかし、2021年には「すまい給付金」が終了。

さらに、住宅ローン減税が2022年から1%から0.7%へ引き下げされました。その理由は住宅ローン金利と住宅ローン控除の「逆ザヤ」です。低金利により住宅ローンの返済で支払う利息よりも、住宅ローン控除による節税額が多くなっていました。国は税制改正で「待った」をかけたことになり、住宅購入による国の補助が大きく減ってしまいました。

振り返ってみると、2019年~2021年に新築住宅を建築し、住宅ローン控除を受けた人は「すまい給付金」、住宅ローン控除の特例の両方を受けることが出来たので、近年一番お得だったかもしれません。

さらに2024年からは、より住宅ローン控除の条件が厳しくなります。借入限度額の縮小や、一定の基準を満たさない新築住宅は住宅ローン控除が受けられなくなります。住宅ローン減税を使えないとなると、数百万単位で今までよりも負担が大きくなりますし、基準を満たす家を建築しようとすれば、今度は建築費が高くなるなど、どちらにしても従来通りの予算では家を建てられないことは間違いありません。

控除率
一律0.7%
2021年    2022年・2023年2024年・2025年



認定住宅 500万円
(控除期間13年:600万
35万円×13年=455万円31.5万円×13年=409.5万円
ZEH水準
省エネ住宅
400万円
(控除期間13年:480万円)
31.5万円×13年=409.5万円24.5万円×13年=318.5万円
省エネ基準
適合住宅
400万円
(控除期間13年:480万円)
28万円×13年=364万円 21万円×13年=273万円
一般住宅 400万円
(控除期間13年:480万円)
21万円×13年=273万円     0円



認定・ZEH水準
省エネ住宅
300万円 21万円×13年=210万円 21万円×13年=210万円
一般住宅 200万円 14万円×13年=140万円 14万円×13年=140万円

建築費は上がる要素のみ

2024年以降、新築の住宅で住宅ローン控除を受けるためには省エネ機能が必須となります。そのため、新築住宅の価格は今まで以上に高いものになると考えられます。

また、建築費が上がる要因として、働き方改正関連法の残業時間の上限規制(月45時間・年360時間を超える残業の禁止)は2019年に施行されていましたが、実は建築業界も運送業同様に適用外でした。しかし、5年の猶予期間を経て2024年4月からはついに残業上限の実施が施工されることになります。

結果どうなるかというと、例えば「残業代込みで給与が月40万」だった人が、残業が無くなったことにより「残業時間の減少により月35万円に給与が減少」、しかし、残業代を当てにしていたものが無くなるため、生活ができなくなります。企業は雇用を守るために給与のベースアップを余儀なくされます。

結果、建築の職人を少ない時間で今までよりも高い給与ベースで雇用しなければならないため建築費を上げなければなりません。

上記2点などの理由により、新築住宅の建築コストは来年も上がり続け、来年からは建築需要が冷え込む可能性が高そうです。家を建てるなら早めの行動をお勧めします。