令和5年度の地価公示が発表

不動産投資

北海道の分譲マンション価格が頭打ちか

不動産経済研究所のデータによると、札幌市内の新築分譲マンションは2015年~2022年までの間に1戸1億円を超える「億ション」などを中心とした投資需要の影響により平均価格は5000万円を超えました。しかし、2023年は価格高騰を背景に購入意欲の低下が目立ち、販売業者が発売ペースを落としたほか、再開発に合わせたマンション発売が一段落を迎えました。2023年の平均価格は前年比0.8%減の4980万円となり、3大都市圏が牽引する形で同15.4%増となった全国平均とは対照的な値動きとなりました。ですが札幌市の平均価格は名古屋市、広島市、仙台市、福岡市などの地方都市の中では最も高いマンション価格を維持しています。

2023年12月に完成した札幌駅北口直結の「ONE札幌ステーションタワー」を例に挙げると最高販売価格は最上階の5億円です。竣工前から全624戸が完売しており、購入者の5割が道内となっています。販売主である大和ハウス工業は半数以上が投資目的やセカンドハウス用として購入していると言及しています。

実際の年収に見合った価格上昇なのでしょうか?「2022年度フラット35利用者調査」ではマンション購入にかかった所要資金は世帯年収の約7倍という結果が出ています。全国家計構造調査(19年)によると肝心の札幌市の世帯年収は453万円であり、全国の主要21大都市の中で20位という位置づけ。全国の世帯年収は558万ですので、約100万円下回っています。このことから新築分譲マンションのターゲット層は道民よりは前述した投資目的やインバウンドによるセカンドハウス用として外国人や道外からの需要が多いと考えられています。

札幌市と近郊の工事地価近況

新築分譲マンションの価格の高騰は一旦小康状態となりましたが、札幌中心部の公示地価も同様に上昇しているのでしょうか。中央区では住宅地は前年よりも高い上昇率を維持していますが、商業地は前年より微減となっています。それ以外の区では引き続き上昇を続けていますが、前年を下回る上昇率であり、特に手稲区と清田区といった郊外での伸びの鈍化が顕著です。商業地に注目するとオフィスビルの取得や建て替え需要が堅調なことから上昇率の伸びが確認されています。

北広島市は「北海道ボールパークFビレッジ」の開業により地価の上昇が鈍化しました。しかし今後も北海道医療大の移転やJR北広島駅西口の再開発が待機しており上昇傾向は続きそうです。

石狩市は12調査地点のうち9地点で上昇が見受けられました。商業地、工業地共に好調に伸びており、特に新港南は全道3位の上昇率を記録しました。緑苑台地区で宅地供給が予定されており花川地区の需要が増える可能性があります。

江別市は住宅地では6年連続、商業地では5年連続の平均価格の上昇を記録しました。札幌市のベッドタウンとして住宅用地の需要が高く、それに付随して商業用地も多いため勢いが衰えませんでした。

苫小牧市では千歳市の宅地価格の上昇の影響が苫小牧市東部に及んでいます。数年前までは空き地もあった東部ですが、今では需要が多く土地が足りなくなっている状態です。東部の価格上昇により割安感が目立つ中心部、西部に子育て世帯の需要が高まっています。

千歳市は商業地の価格の推移は全道1位を維持しています。一方住宅地の上昇率は落ち着いています。その要因としてラピダスの工場建設のピークが2024年の夏とされており、それに合わせて住宅用地の需要も一段落すると考えられているからです。

番外編として富良野市北の峰町の地価の上昇率が27.9%で全国1位となりました。リゾート地として注目されており、同じリゾート地であるニセコと比べるとかなり安価で、需要が増えたようです。円安も追い風となって外国人による土地購入はこれからも続く見通しです。

マイナス金利解除の影響

3月19日に日本銀行の金融政策決定会合でマイナス金利解除が決定されました。円安解消の起爆剤として打ち出されましたが、結果として解消はできず現状維持となりました。利上げは住宅ローンや不動産融資の金利に直結するので不動産投資家にとっても大きなニュースです。短期的に大きな影響は出ない可能性が高いですが、今後も利上げを継続するという声明を出しているため注視する必要があります。

2024年問題、人材不足、マイナス金利解除等で地価の大幅な上昇率は落ち着くと思われますが、まだまだ上昇トレンドは続きそうです。地価が上がることは一概に良いこととは言えず、これから購入を考えている人達にとってさらにハードルが上がることとなります。新築分譲マンションなどは平均的な世帯年収では手が届かず資産力のある外国人、道外の首都圏の人たちが購入し続けるでしょう。そして円安が解消されない限り富良野市北の峰町のように海外マネーの流入も続くでしょう。居住地を求める道民は札幌近郊に、そして資本力のある人達は札幌市中心部を投資、別荘目的の購入というように棲み分けがより一層明確になると思われます。