不動産オーナーが知っておきたい2024年の法改正

法律

相続登記の申請義務化

4月から相続による名義変更が義務化されました。今までは相続後、登記を変更しなくても問題ありませんでしたが、所有者が変更されていない土地建物が増えたため、それを解消するために制定されました。

相続で取得したことを知った日から3年以内に変更登記をしなければ10万円以下の過料が科せられます。

生前贈与加算期間(持ち戻し)が3年から7年に

「暦年贈与」は生前に毎年110万円までなら非課税(2,500万円まで)で、超過した場合は累進課税となる制度ですが、1月1日から「暦年贈与」では持ち戻し(贈与した分が相続財産に上乗せされる)対象期間が3年から7年に延長されました。   今までは暦年贈与をしていても亡くなる前の3年間に贈与していた金額が相続税に加算されていました。2024年度からは3年から7年に延びたため、暦年贈与を利用して相続税対策をしている方の負担が増える可能性が出てきました。

一方で「相続時精算課税制度」が改正され使うメリットが出てきました。受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価格と相続財産の価格を合計した金額から相続税を計算し、一括して相続する制度です。従来は「相続時精算課税制度」には基礎控除がありませんでしたが、2024年1月からは基礎控除が創設されました。

ただし、この制度を利用するには確定申告と一緒に届け出が必要となり、取消は出来ませんのでご注意ください。詳しくは担当の税理士さんにご確認をお願いします。

「タワマン節税」の改正

相続税や固定資産税などへの税金対策として、タワーマンション(タワマン)を所有する、いわゆるタワマン節税が厳しくなりました。

タワマン節税とは、相続税の対象となる相続課税評価額と実際の購入額(時価)の開きが大きい事を利用したものです。これまでは、高層階ほど市場価値が高いことが反映されず、低層階と高層階でも共有持ち分であれば相続税額は変わりませんでした。しかし今回の改正では、高層階ほど税額が上がっていく形となりました。

2024年1月1日からは評価額算定を新たにし、およそ市場価格の4割とされる評価額を戸建てと同じく6割程度まで引き上げることになります。

働き方改革関連法案の適用(2024年問題)

既に2019年より施行されている法律ですが、建設業や運送業などでは「残業上限規制」について5年の猶予が設定されていました。しかし、ついに2024年、原則「1ヶ月で45時間、1年で360時間以内」という形で、時間外労働上限が厳しく規制されました。

 2024年問題といえば、報道で運送業が話題になりがちですが、オーナーにとっては建設業の方が大きく影響を受けます。

少子高齢化により人材が不足している中、工期に間に合わせるため土日も作業して調整するといった方法で調整していたものが、今後出来なくなります。よって、今まで以上に工期がかかるようになります。

実際に当社から工事業者さんへ原状回復工事を依頼しても1~2週間待つ事といった事も発生しています。ただ、長期的にみると今までは長時間労働が蔓延し、厳しい職業として敬遠されていた建設業のイメージが大きく変わるという意味では人材確保への大きなメリットだと言えます。

まとめ 2025年の法改正

今回ご紹介した法改正を念頭に置きつつ、2024年に改正されたルール変更がどのように自分たちに影響を及ぼすのか、どのような対応が必要なのか再考する必要があります。

また、2025年4月には建築基準法「4号特例」が縮小され、実質的に廃止されます。これまで4号建築物の対象であった木造2階建てや延床面積200㎡超の平屋建ては「新2号建築物」となり、大規模な修繕等も建築確認・審査が審査省略制度の対象外になります。

  • 設計・建築確認段階での工期が延びる(2~3週間が1ヶ月以上になると想定)
  • 新たに構造計算書が必要になるための費用や新しい規定に合わせるためにコストがかかる

このため、建築期間が延び、建築費も今までよりも高くなることが想定されます。

今回の建築基準法の改正の背景として「省エネ対策」「住宅倒壊防止」が挙げられます。省エネ対策は2022年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律」によるもので、住宅倒壊防止は地震等による倒壊を防止するために制定されました。メリットとしては住宅の安全性が高まることです。

安全性が担保されるのは良い事ですが、申請の手間が増える事とコストアップがどのように建築業界に影響を与えるのかは不透明な状況です。