建築費高騰で今、賃貸市場は

不動産投資

  建築費が高騰をし続けています。一般財団法人建設物価調査会の調べでは2015年を基準の100としたとき、札幌市内、集合住宅の鉄筋コンクリート造では建築費が135.8ポイントと35%以上も上昇しています。2025年4月にはコンクリートの値上げや省エネ基準適合が義務化されたことにより、これまで届け出義務や説明義務のみだった建築物も省エネ基準への適合が必須となり、手間やコストがさらに増しており、建築費の上昇に歯止めがかかりません。

出典 一般財団法人 建設物価調査会 建設物価 建築費指数

 建築費高騰を受け、構図はお菓子や食品の値上げと対策と同様の構図で、2019年頃までは多少の建築費の値上げがあっても、部屋の面積を小さくすることで賃料に転嫁することを回避してきました。しかし、2020年頃からはそれも限界になり、家賃を従来よりも引き上げて計画が増加。結果として、新築賃貸マンションの賃料が上がり続けています。また、木造アパートはウッドショックなどの影響により鉄筋コンクリートとの価格差が縮まり、供給も以前に比べると減少傾向にあります。

 間取りについては2LDK以上のファミリータイプが供給不足。理由として単身タイプよりも㎡あたりの家賃単価が低くなってしまうためです。また、ファミリータイプだと世帯分の駐車場を用意しないと決まりにくいというのもファミリータイプの建築が少ない要因となっています。

 一方で、ファミリータイプの需要は顕著です。それは、分譲マンションや戸建ても高騰しているため、購入を泣く泣くあきらめた層が増えたことによります。さらに3LDKの間取りの物件はさらに少なく、空室情報が出たら即、申し込みが入るという加熱ぶりも見て取れます。

 そのため、賃料高騰前に建築した築浅のファミリータイプの物件も、賃料を見直して少し値上げして募集をするケースが増えています。一方で単身向けの古い築年数の物件は供給量が多いため、従来の賃料と変わらない状況です。

既存の入居者の賃料も上げたい

 「賃料が上がっている」という話は報道でも報じられているため、一部のオーナー様からは既存入居者の賃料を上げられないのかというお問合せをいただく事があります。

 結論から言うと「できます」が、借主が同意しなければいけません。借地借家法では「経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して賃料が不相当となった場合、当事者は建築物の借賃の額の増減を請求することができる」といった旨が定められています。

 ですが、オーナー側で一方的に賃料増額することはできません。借主が同意が取れなく、それでも賃料の値上げをしたい場合は裁判所に申し立てをする必要があります。

 よくある勘違いに「近隣の賃料と同額の賃料額に増額できる」というものがあります。通常、近隣の賃料というのは「新規賃料」のことであり、賃料増減で問題となる「継続賃料」とは大きく異なるものです。多くの場合、継続賃料は新規賃料よりも低い金額になることに注意が必要です。

 さらに、値上げ賃料の算出には不動産鑑定士が鑑定し客観的な賃料を算定する必要があることや、申し立てをするために弁護士にも依頼する必要があり、それぞれ費用がかかりますので実際に値上げできたとしても費用に見合った効果が出ない可能性があります。

既存入居者の賃料増額の事例

 借主が納得するのであれば賃料アップは問題なくできます。例えば、既存入居者の賃料増額の方法の一つとして、エアコンを付ける代わりに入居者様に数千円の賃料アップ(物件の賃料により異なる)をお願いする方法です。オーナー側は初期投資がそれなりに必要ですが減価償却での節税効果があり、入居者側にも納得させやすい方法です。

 ちなみに、このエアコンですが、不動産ポータルサイトのスーモで募集している部屋のエアコンの有無を調べたところ、東京や仙台など北海道以外の地域で設置は98%であったのに対し、札幌では46%しかありません。家賃が4万円未満の物件については12%と、まだまだ設置が少ないようですが、札幌でも年々暑い日が多くなっているので需要は高く、取り付けることで他の物件との差別化を図ることができます。

賃貸アパートマンションの今後

 新築物件の建築は今まで以上に採算が取れなくなり、不動産投資も縮小し、建築業界が影響を受ける可能性があります。また、建築資材も高騰に加え、人手不足による人件費高騰も合わせて建築費高騰を招いています。  賃料上昇も現状はギリギリ許容範囲といえますが、高騰し過ぎると新築を建てても入居が決まらないということが発生する可能性があるため、無理な賃料設定の建築計画をしないように熟慮する必要がありそうです。