確定申告へ向けて

税金

今年もあと1ヶ月ちょっととなりました。年が明けると確定申告のシーズンとなり、不動産オーナーにとっては「一年の経営を数字で振り返る」大切な時期であると同時に、賢く節税できるかどうかの分かれ道でもあります。
同じ収入でも、支出や計上の方法次第で税金に大きな差が出ることがあります。そこで今回は、確定申告前に行っておくと効果的な「節税対策3選」を紹介します。

① 修繕費のタイミングと区分を見直す

建物や設備の修理・交換は、不動産経営には欠かせない支出です。しかし、税務上は「修繕費」と「資本的支出」に分けられ、扱いが異なります。

・修繕費:建物の原状回復や維持を目的とした支出

→ 当年の経費として一括計上可能

・資本的支出:価値を高める、または耐用年数を延ばす支出

→ 複数年にわたり減価償却で経費化

この区分を誤ると、節税のチャンスを逃すことになります。たとえば、古くなった壁紙や給湯器の交換、建物の部分補修などは「修繕費」として計上できるケースが多いです。

また、大規模な修繕を翌年に予定している場合は、工事の実施時期を前倒しすることで、当年の経費を増やし、所得を圧縮できます。税務判断が難しいケースもあるため、領収書や見積書に「修繕目的」を明記しておくことが大切です。

② 減価償却の見直しで“非現金経費”を最大化

減価償却とは、建物や設備など高額な資産を複数年にわたり経費化していく制度です。現金の支出がない年でも経費として計上できるため、キャッシュを減らさずに節税できるのが大きな魅力です。

付帯設備で資本的支出ができるものは建物とは別に短い耐用年数で償却できるため、設備ごとに資産登録を行うことで節税効果を高めることが可能です。オーナーによっては建物が古くなり建物自体の減価償却が無くなったため、全戸にエアコンを取り付け新たな減価償却を作り、節税を計画的に行う方もおられます。

この様に、家賃収入も重要ではありますが、減価償却の有効活用も賃貸経営には大変重要となります。

■減価償却が出来る主な工事

設備・工事内容概要耐用年数の目安(税法上)
給湯器の新設・交換(容量アップなど)性能向上や新機種への交換の場合は資本的支出約6年
エアコン・空調設備の設置建物付属設備として資産計上約6年
キッチン・浴室の全面交換旧設備より高性能化・高級仕様化した場合約15年(建物付属設備)
エレベーター新設・全面更新建物の機能を高める改修約15年
照明設備をLEDに一新節電性能向上を目的とした全面改修約6年
屋上防水・外壁全面改修建物寿命を延ばす目的の大規模修繕建物と同じ耐用年数
外構・フェンス・駐車場舗装新設または大規模な改良約10〜15年
防犯カメラやオートロックシステムの新設新たに設置する場合は資産計上約6年
太陽光発電システムの設置節電・発電目的で新設約17年(電気設備扱い)

③ 青色申告特別控除と家族への給与活用

不動産オーナーにとって、青色申告制度の活用は欠かせない節税対策です。

青色申告を選択すると、最大で65万円の特別控除が受けられます(e-Taxによる申告+複式簿記による帳簿付けが条件)。

さらに、家族を経営に従事させている場合は、「青色事業専従者給与」として、家族への給与を必要経費にできます。

たとえば、家賃管理・入金確認・入居者対応などを家族に手伝ってもらっている場合、その労務に見合った給与を支払うことで、所得を家族に分散させ、世帯全体での節税が可能になります。ただし、実際に業務を行っている実態が必要で、給与額は市場相場に見合った金額でなければなりません。

また、青色申告を行うことで「赤字の繰越控除」も利用でき、経営初期の赤字を翌年以降に繰り越して相殺することができます。これも大きな節税メリットのひとつです。

節税のカギは「早めの準備」と「証拠の残し方」

節税は「知識」だけでなく、「準備の早さ」でも差が出ます。
領収書や明細書の整理を年末ギリギリに行うと、支出の時期を調整するチャンスを逃すこともあります。12月のうちに経費の把握と来年の支出計画を立てておくことで、合法的かつ効果的な節税が可能になります。

不動産オーナーが確定申告前に取り組むべき節税対策3つは「修繕費の計上と工事時期の見直し」「減価償却の最適化と資産区分の再確認」「青色申告特別控除と家族給与の活用」です。 これらを実践することで、余計な税負担を抑えつつ、キャッシュを手元に残すことができます。節税は「抜け道」ではなく、「合法的な経営判断」です。早めの準備と正確な記帳で、次の申告をより賢く乗り切りましょう。