2024年以降にタワーマンション節税の引き締め

税金

行き過ぎたタワーマンション節税にテコ入れ

相続税対策として有名なタワーマンションを購入する方法が2024年以降に引き締めされる見通しです。今月のかわら版では、タワーマンション節税方法の内容と税制度引き締めに至った理由を説明したいと思います。

タワーマンション購入が相続税対策として活用される理由が、相続税評価額が実勢価格よりも低い、土地の持分割合が戸建等に比べ少ないことにより課税額が低い、第三者の賃貸利用による評価額の減額があるという事が理由です。具体的には以下の通りです。

1. 相続税評価額

現金をそのまま相続する場合は100%課税されますが、不動産だと相続税評価額は実勢価格の80%程度で、そこから相続税率をかけるため、現金よりも相続税が低くなります。

そのため、相続税対策のために賃貸マンションなどを建築、購入するといった事が一般的ですが、特にタワーマンションは実勢価格と評価額の差が大きい傾向にあるため、節税効果が高いとされてきました。

2. 土地の持分割合

マンションの土地評価額は各部屋の床面積を参照して課せられます。つまり、建物の戸数が多くなれば多くなるほど1戸あたりの評価額が下がります。タワーマンションは部屋の戸数が普通のアパートに比べて多いため、土地の持分割合が少なく課税額が低くなる傾向にあります。

3. 第三者の賃貸利用

一室を所有者本人の使用ではなく第三者に賃貸していると借家権割合で相続税評価額を3割減額する事が出来ます。さらに、家賃収入を得ることもできます。注意点としては所有者の親族などに無償で貸す場合などは評価額軽減の対象にならない可能性があることです。

タワーマンション一室は特にこの3つの要件を最大化しやすく、時価と相続税評価の差が最も大きくなります。

なぜ制度見直し?

今年の6月30日に行われた国税庁有識者会議ではマンション(一般のマンション、タワーマンション含む)の約7割は評価額が市場価格の半分以下で評価されていると発表しています。

その一方で、一戸建ての評価額は時価の6割から8割になるとしています。この差を国税庁は前々から注視していたのは間違いありません。

そして国税庁が重い腰をあげる大きな要因となったのが2022年4月の納税者と国税庁の相続税対策をめぐる最高裁の判決です。この裁判は納税者側が節税方法を駆使して遺産相続が9億円を超えるにもかかわらず相続税を0円にしたことが最大の焦点でした。結果と

しては、国税庁の勝訴となり納税者側が主張する不動産評価額を認めず、最終的に2億円超えの追徴課税が課せられました。

財産評価基本通達6項

  「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」 言い換えると路線価などを気にせずに国税庁が不動産を時価で評価できるということです。この判決を後押しとして「伝家の宝刀」片手に持ちながら国税庁は 『評価額の差が大きいことが税負担の公平性を害している』  

という信念を基に納税者側の行き過ぎた節税を見逃すまいと動き出すことになりました。

タワーマンションを活用した節税の今後は

2022年4月の相続税0円は極端な実例でしたが、国税庁がタワーマンション節税方法を含む路線価や固定資産税評価額の引き上げを考慮するキッカケになったことは間違いありません。

国税庁有識者会議で発表された補正案として、築年数、建物の総階数、部屋がある所在階、土地の持分割合による評価額の低下の4つの指数を補正して、評価額が時価の6割を下回る場合は強制的に6割まで引き上げるという評価方法が採用されると言われています。

それでも国税庁の引き締めはまだまだ議論の段階であり、今後どのような制度改正が入るのか不確定の状態です。ただし、2022年4月の裁判のような極端な例でなければ追徴されることも無いとされています。

不動産購入の目的が単に相続節税対策とみなされないようにタワーマンションを購入する際は

①相続直前の購入でないか

②相続開始後すぐに売却をしてはいけない

③売却の価格が大きく路線価と乖離していないか

の3点に気をつけましょう。くれぐれも、相続税の節税は税理士等の専門家とよく話し合って進めてください。タワーマンションに限らず実勢価格と相続税評価額が大きく乖離している場合も注意してください。