2023年(令和5年)4月1日に北海道豊富町の温泉街に開業した長期宿泊が可能な宿泊施設「アズマシーナ」。札幌市から約300kmも離れた土地で宿泊施設を建設した経緯とそこで目指す未来について弊社社長 森 賢一 に取材しました。
不動産管理業がメインの会社がなぜ宿泊施設をオープンしたのか?
森社長:「アズマシーナ」というのは豊富温泉でアトピー性皮膚炎を患っている人たちが湯治をしやすいように長期滞在ができるという点をコンセプトにして建てました。
ただ他の宿泊施設と明確に違う点は宿泊費です。湯治は一日二日ではなく、週単位、月単位という長期戦になります。食事付き宿泊施設だと滞在費が高額になってしまいます。そこで「アズマシーナ」では食事は全て自炊形式にしており、少しでも宿泊費を減らすようにしています。
インタビュアー:アズマシーナではどのくらいの宿泊費になるのでしょう?
森社長:1泊1万円から、予約時に5泊以上予約すると1泊あたり7500円、10泊以上予約すると1泊あたり6000円、15泊以上予約すると5500円になります。なので、長く滞在する程1泊あたりの料金が下がる仕組みを採用しています。さらに一部屋に2人まで泊まれるため、2人で泊まっていただければさらにお得です。
インタビュアー:なぜ札幌市で事業を展開している札幌オーナーズが豊富町に宿泊施設をオープンしたのでしょうか?
森社長:8年前に社員旅行で泊まった旅館で温泉に入らない社員がいました。なぜ入らないのかを尋ねたら、「アトピーのため温泉に入るのが辛い」と答えたんです。そこで初めて私は豊富温泉がアトピーを患っている人の症状を緩和させる成分を含んだ温泉だと知ったのです。
さらに町営の日帰り温泉施設「豊富温泉ふれあいセンター」は道内で唯一温泉利用料と往復交通費が医療費控除の対象となる厚生労働省の「温泉利用型健康増進施設」にも認定されています。
そういった湯治目的でこられる人たちの経済的負担を少しでも軽減できればとの思いで豊富温泉街に「アズマシーナ」をオープンしたのです。
インタビュアー:オープンまでの道のりは大変でしたか?
森社長:そうですね。いきなり札幌の企業が宿泊施設を提案しても豊富町役場が困るので1年程かけて企画書を作り、豊富町役場に売り込みました。ただどこの馬の骨かわからない企業が売込みしても信頼を得られる確証が低かったため、豊富町に関連がある方々のツテを頼りにしました。例えば、当社の取引先の知り合い、又稚内市で飲食店を経営している人の知り合い等々間接的に当社が信用に値する会社であるということを伝えてもらいました。数か月かけて現地に赴き直接話を聞きながらこの街の歴史や人脈を辿り、そうした下準備をした後に豊富町役場で私自ら温泉街に「アズマシーナ」を建設する意義をプレゼンテーションしました。そして最後に豊富温泉街の設備等の修繕目的のための寄付をしました。そうしてプレゼンテーションから3年後に土地を購入して建築が始まったんです。
インタビュアー:建設等の資金は全て自己で賄ったのですか?
森社長:不動産仲介と管理が主軸ですが新たな事業として宿泊業に挑戦する予定が、コロナ前のこともあり建築費等も深く考えておらず進めていきました。そしてウクライナ戦争、ウッドショック、円安とどんどん物価の高騰が進み半分は諦めかけていたところ、コロナ時代の経済社会の変化を促すため「事業再構築補助金」という制度があり、それに応募したところ採択されたため、これも後押しとなりアズマシーナの建築が実現可能となりました。運営する上で、この制度が無ければ先に話した低料金の宿泊料は実現しなかったと思いますので、かなり助かりました。
インタビュアー:オープンしてからの営業は順調でしょうか?
森社長:夏の間は湯治目的のほかにも避暑地としての注目がありおかげさまで連日満室状態でした。宿泊していただいた方にお願いしているアンケートでもなかなか評判がいいのでこれを持続できればと考えています。ただ冬に入るとどうしても予約が半分以下になってしまいます。なので冬季割引を実施するなどして入客数を増やせるような仕掛けも打っていきます。その他にもワーケーション、仕事を意味するワークと休暇を意味するバケーションを組み合わせたワーケーションプランもあります。コロナ禍で流行したリモートワークで生計を立てている方々に仕事をしながら湯治もできるようにというプランです。
弊社のアズマシーナが他の温泉ホテルの営業の起爆剤になって古びた温泉街という印象がある豊富温泉街の活性化に繋がればと思っています。まだオープンから一年経っていませんが今後ともよろしくお願いします。
余談ですが、アズマシーナ裏にライトアップされた白樺を鑑賞できる新名所を造ったので泊まった際に是非見ていってください。