減り続ける日本人、増え続ける外国人居住者
札幌市が発表した住民基本台帳による2022年の人口推移で、札幌市の日本人人口は2年連続で減少。2021年と比べて3400人程減少しました。死亡数が出生数を上回り、札幌市への転入による増加でも補えなかったことが原因となっています。新型コロナウイルスでの経済的不安により2020年から3年連続の減少となりました。北海道全体での減少率は47都道府県の中でも最大。さらに高い出生率で人口増加を続けていた沖縄県も初めて人口減に転じ、全ての都道府県で人口減を記録しました。
しかし、外国人居住者の人口は過去最多となっています。北海道だけでみると占冠村、赤井川村、留寿都村、ニセコ町などリゾート地として有名な場所を中心に外国人居住者が増加しています。
そうしたリゾート地はウィンタースポーツなどで海外からの観光客が多く、英語をはじめとした外国語の需要が高いため外国人居住者が増えていると考えられます。それ以外にも農業や漁業が盛んな地域でも外国人居住者の増加が見受けられます。コロナ禍の入国規制の緩和やインバウンド需要により、これからも北海道への外国人観光客、労働者共に増えていくと予想されます。
北海道内の人口移動の傾向として都市部出身者は道外か道内他都市部、都市部以外は道外と都市部への移動が顕著となっています。札幌市を含む石狩管内の転出者を例に挙げると、道内の転出先の上位3位を占めているのが旭川を有する上川管内、順に胆振、渡島となっています。この傾向が示していることは、都市部出身者が生まれ育った街より規模が小さい街へ移動することはあまり多くないということです。反対に石狩以外の管内での転出先のほぼ全てが石狩となっており、札幌を有する石狩管内に道内の人口が一極集中しているのがわかります。
道内の人口減少についての世論調査
北海道が行った人口減少に対する世論調査からも都市圏以外の住みにくさが伝わってきます。回答者の過半数が北海道の人口減少に対して危機感を感じていると答えています。不安を抱く点は公共交通機関の減便・廃止、医療・福祉サービスの縮小、雇用の選択肢の減少に回答が集中しました。これらの不安点はそのまま札幌市に移住する理由の上位3つとなっています。特に仕事の選択肢が多いからと回答した割合は85%を越えており、いかに安定した生活を求めているのかが読み取れます。
仕事の選択肢と安定した収入は結婚、出産、子育てへの希望に大きく関わっています。2020年に行われた世論調査では、理想的な子どもの人数は?という質問に対して、2人と答えたのが44%、3人と答えたのが38%でした。対して2024年では、2人と答えたのが51%、3人と答えたのが27%でした。たった4年しか経過していませんが、北海道に住む人が子供を持つということに対してますます消極的になっているのが明らかです。
日本経済が好景気という報道もありますが、実際のところ一般市民はそれほど恩恵を受けているとは実感しにくいというのが世論では示されています。
北海道人口の先行き
人口減少については以前から言及されてきましたが、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか?総務省によると、国内需要の減少による経済規模の縮小、労働力不足、国際競争力の低下、医療・介護費の増大など社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊などが挙げられます。加えて北海道の地域的特性を加えると、広大な土地に住居が分散しているため除雪やインフラ整備などの行政が行き届かなくなることが挙げられます。
直接的ではないですが、人口減少の影響として現在表面化しているのは建設業界の人手不足による工期の遅れ、物流業界やバスなどの公共交通機関の減便でしょう。冬の時期だと除雪業者の人手不足も深刻です。これらに共通していることは生活労働環境が厳しいということでしょう。北海道が実施した世論調査でも結婚、出産、子育てに対して躊躇する理由の1位が雇用の選択肢、安定、収入です。
人手不足によりこれらのサービスが縮小していき、さらに人手が減っていくという悪循環に陥っています。さらに2024年問題として注目されている残業規制が4月から開始します。とにかく広く住戸が点在している北海道の長距離輸送の効率性が下がることが予想されるため、地方部への物流、人流が滞り結果的に人口減少に拍車をかける可能性があります。
まとめ
ここまで悲観的な話ばかりになってしまいましたが、千歳のラピダス新工場設立などの半導体ビジネスにより活気が出ているニュースがあります。「北海道バレー」構想という名のもとに建設員、技術者の移住で人口減少に歯止めがかかることを期待したいところです。
外国人居住者の増加も、ラピダス新工場設立も北海道の人口減少を食い止める一時的な対症療法にしかなりません。やはり物価高騰の終了、労働環境の改善、賃金の増加など日本人が安定した生活を維持できると思えるような環境を創ることが北海道の人口減少の療法だと思います。