相続登記義務化が4月1日から開始

法律

 相続登記が行われないまま所有者が特定できない空き家や空き地が増えてしまうと、適切に処分できず、不動産の取引をはじめ都市開発の妨げにもなります。国土交通省によると、日本全国の所有者不明の土地の相続が理由となって所有権移転の未登記とされている土地の割合はおよそ13.4%となっています。相続に係る所有者不明の土地は今後も増えていくと思われます。

では、相続登記をしない理由はなぜでしょうか?一つは相続登記の手続きが大変なイメージがあること、さらに相続登記が完了すると固定資産税の支払いが生じるため、それを避けるために登記しないという事が挙げられます。

相続登記の義務化が始まりました

相続登記の義務化は2024年4月1日から開始しました。そして、相続登記の期限は「相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内」に定められました。認知していない場合は当然ですがこの期間に含まれません。また遺産分割協議の成立により不動産を取得した場合も「遺産分割協議が成立した日から3年以内」に登記することが義務付けられました。義務化されたということは言い換えると期限内に登記をしなかった場合に罰則が課されることになります。正当な理由が無いのに登記しなかった場合には10万円以下の過料が課されます。これに追随して不動産の所有者の氏名又は住所の変更がある際にも2年以内に変更しない場合に5万円以下の過料が課されます。ちなみに、義務化以前に相続した不動産についても、改正法の施行日(4月1日)から3年以内に相続登記をする必要があります。

しかしながら、相続登記は煩雑な手続きが多くさらに遺産分割協議等で土地建物の相続人が決まらず3年以内に登記が間に合わないなどの理由を勘案して、相続登記の義務化と同時に相続申告登記という制度が制定されました。

この相続申告登記という制度の特徴は3点あります。

  • 期限以内に申告すれば義務を果たしたとみなされる
  • 相続人が複数人存在していても単独で申請できる
  • 戸籍謄本のみで被相続人と相続関係があることを証明できる

相続人が複数人いる場合でも、単独でこの申告をすれば義務を履行したとみなされるため、罰則が課されることがありません。さらに相続登記よりも手続きが簡潔であり被相続人との相続関係が証明できる書類の提出のみで申告が出来ます。

注意すべき点はあくまで相続する権利を持つ人の証明に過ぎず、実際に不動産の名義人になる訳ではないということです。また、この手続きは簡易的な物のため正当な所有者ではないので第三者に所有権などの権利を主張できません。そして、登記簿に申告者の住所と氏名が記載されるため、相続登記がきちんと完了していない状態という事がわかるので、不動産業者から営業のチラシなどが送られてくる可能性があります。

相続土地国庫帰属制度

話は変わりますが、相続されても困るという方もいます。2023年4月27日に施行されたこの制度では相続した土地が不要な相続人が法務大臣に対して申請、承認されて所有権を国に帰属させます。但し全ての土地を受け入れている訳ではありません。例えば、土地の上に建物があるケース、第三者の権利が絡んでいるケース、土壌汚染や崖などの管理が大変なケースなどです。

さらに帰属に伴い、土地一筆当たりの審査手数料14,000円と国が管理するため10年分の管理費用相当額が必要となります。原則として宅地、田、畑は面積にかかわらず20万円の負担となります。

市街化区域や用途地域内の土地に関しては、法務省が定めた算定式にあてはめて算出されます。例えば市街化区域又は用途地域内にある50㎡の土地では、面積に4,070円を掛けた金額に追加で208,000円を追加した額になり、合計411,500円の負担金を支出することになります。そして、この制度を利用するためには事前に相続登記が必要ですので、いずれにしても土地を手放すにもお金がかかります。

価値を生み出す不動産なのか重荷の負動産なのか

法務省に確認したところ、相続登記義務化後は施行前に比べ、約1割程登記件数が増えているとのことでした。誰が現所有者か国でも把握できていない状況を改善するため相続登記義務化をしても効果が薄いと思われましたが、過料10万円の罰則の効果があった様で、結果的に相続登記件数が増えたとのことです。なお、過料を科したケースはまだ無いとの回答でした。

登記官が相続人に相続登記の催告をするのは、相続人が相続登記申請の際に遺言状又は遺産分割協議書に別の不動産を相続する旨が書かれていた時と法務省で定めています。つまり、相続登記を行わなければ過料を課す術が無いため、過料制度は登記を今までよりしてもらう啓発が目的の制度であると考えられます。実情は、過料制度があったとしても従来と変わらず、相続をしても登記せずそのままにしてしまうというケースは後を絶たないと予想されます。

地方の土地不動産は負動産になってしまうイメージが強いですが、活用方法によっては宝の山として価値を生み出す不動産になる事もあります。例としてはニセコや富良野市北の峰町のリゾート地などが挙げられます。ひと昔前までは観光客も少なく負動産化していましたが、近年のインバウンド需要で脚光を浴び土地価格も大幅に急上昇しました。

こうした事例もあることから、国が相続登記をしやすいように手続きの簡略化や登録免許税の減税措置などの対策、相続土地国庫帰属制度のハードルをもっと低くし、土地を不動産市場に改めて流通させるような取り組みがあれば、手つかずになっている土地の有効活用が活発化すると思いますので、今後の制度の緩和に注目していきたいと思います。