蛍光灯の製造・輸出入停止

設備

 2023年11月に開催された「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議」において、一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入を2027年までに段階的に廃止することが決定されました。廃止が決まったのは蛍光灯に含まれている水銀による健康被害や環境汚染を防ぐためです。

既に使用している蛍光灯の継続使用、廃止日までに製造された製品の売り買い及びその使用が禁止されるものではありませんが、2027年以降は蛍光灯の新たな供給が無くなるため、将来的に蛍光灯の照明はLED照明への移行が必要となります。

 室内の蛍光灯照明は、壊れた時や入居者の入退去時にLED照明にされる方が多いですが、共用部の電灯については依然として、蛍光灯を使用している物件が大多数を占めているのが実情です。

蛍光灯とLED照明 違いと交換方法

 蛍光灯とLED照明の大きな違いはやはり消費電力が少ない事が挙げられます。例えば左の共用廊下によく設置されているFL20形1灯トラフ型器具を例に挙げると、蛍光灯の場合は約23Wで、LEDであれば約7Wになりますので約70%電気使用量を削減する事が出来ます。

 物件に20か所設置している場合は年間約3万円程度の電気料金の削減が可能となります。

また、LED照明は他の光源と比べて紫外線を出さないため虫などを寄せ付けない、蛍光灯に比べ壁紙などの退色・劣化がしにくく、耐久性も高いためメンテナンス回数を抑えられるなどのメリットがあります。その他には蛍光灯はスイッチを入れてから発光までに時間がかかりますが、LED照明は瞬時に発光するという利点もあります。

 既存の蛍光灯器具にLEDランプを取り付けることは事故の原因となるため、これから説明する2つの方法のどちらかを行う必要があります。

1つめが既存の照明器具を改造して、蛍光灯互換型のLEDランプを付ける方法です。具体的には機器の電気配線を組み替えて安定器という機器に電気が流れないようにするという方法です。

ですが、一般社団法人日本照明工業会は改造工事を推奨していません。理由としてはLEDランプと既存の蛍光灯器具の組み合わせが不適切な場合に発煙、照明の落下、発火等の事故が発生する可能性があるためです。さらに改造工事を行うと既設照明器具メーカーの製品保証の対象外となってしまうなど、実施の際は注意が必要な方法です。

 2つめが照明器具をまるごと交換する方法です。1つ目の方法と違い機器を取り換えるだけの為、工費が安くなる傾向にあります。また、LED照明機器もLEDが普及し始めた時よりも本体の販売価格が1台1万円以下と価格が安定してきました。また、共同住宅の廊下照明にはバッテリーが搭載されている非常灯が使われている場合があり、その場合は1台あたり3~4万円となります。(いずれも工事費等は別途になります)

 忘れがちですが共用部の直管の蛍光灯以外にダウンライトの照明もある場合がありますので、こちらも忘れずに確認するようにしてください。工事費の見積と電気料金のシミュレーションをする事も出来ますので、ご興味のある方は弊社までご連絡ください。

交換工事の費用計上について

 LED交換工事の会計処理は減価償却として資本的支出にするか、その年の単年度経費として修繕費にするかの二択となります。

交換工事の費用が20万円未満であれば、内容的に資本的支出であろうと修繕費として計上が可能です。

また既存器具を全て交換する場合でも、費用が60万円を超えない工事は修繕費として扱えます。修繕費か資本的支出かどうか判断がつかない場合は税理士にご確認をお願いします。

交換するなら早めがおすすめ

 なんといっても、LED化すると電気が切れるといった事が無くなりメンテナンス代と手間が減るという事がメリットです。また、交換には費用がかかりますが、電気代も安くなりますので5~7年程度で工事代の元が取れるというのも魅力です。

 2027年には蛍光灯の生産が終了するため、2026年には駆け込みの交換工事が集中すると予想され、工費が高くなったり、機器代も価格改定が相次ぎ値上げの傾向にあり、時間が経過するごとに交換費用が高くなると予想されます。 そのため、共用部照明LED化を検討される方は早めに行動された方が良いでしょう。