現在投資先の選択肢のひとつとして認知され始めているのが「不動産クラウドファンディング」です。1口数万円から不動産投資を始められる気軽さに加え、10%以上の高利回りを生み出す商品もあることなどから、支持が広がっています。
しかし、とある不動産ファンディングが償還日を目の前にして突然の延期を発表したことが大きな話題となっています。今回は不動産の高利回りを謳う投資先について掘り下げていきます。
不動産クラウドファンディングは、個人投資家から集めた資金で事業者が物件を購入し、一定期間運用します。その後、家賃収入や売却などで得られた収益を投資家に分配する仕組みとなっています。運用期間は数カ月から数年程度が一般的で、運用が終了すると投資の元本と運用益が投資家に返金(償還)されます。
不動産クラウドファンディングは「優先劣後出資方式」という仕組みを採用しており他の投資同様元本割れのリスクがあります。例えば、投資金額の総額目標が1億円である場合に、事業者側が目標の30%(3000万円)まで出資すると残りの70%(7000万円)を投資家から集めることになります。その後事業が完了した後に発生した損失が3000万円以内だと事業者側の出資額内で収まるため、投資家たちの出資金に影響が出ることはありません。反対に、3000万円を超える損失が出た場合だと、投資家達の出資金にも影響が発生し、元本割れとなります。
ヤマワケエステートが償還日前日に延期を発表
話題となっているのは高利回りのファンドが多いことで知られる「ヤマワケエステート」の商品の一部です。サッカー元日本代表の本田圭佑氏がオフィシャルアンバサダーを務めるなど、広告も積極的に展開している企業です。償還日が延期となることは不動産クラウドファンディングにおいて珍しいことではありませんが、今回はヤマワケエステートのある商品で償還予定日の前日に延期の発表があったことから、投資家の間で話題となっています。
今回償還の延期が公表されたのは、「札幌市宮の森 隈研吾&Knight Frank社」シリーズというファンドです。
建築家の隈研吾氏が設計を担当した集合住宅「プロスタイル札幌宮の森(右写真)」となっています。山沿いの斜面に低層の全20戸が配置されたデザイナーズ物件で、竣工は2022年8月、間取りは1LDK+Sから3LDKの高級レジデンスです。
ヤマワケエステートでは、同物件全20戸のうち13戸を取得し、4回のシリーズのファンド(1st~4th)に分けて募集を実施。
全シリーズ総額23億900万円を募り、想定利回りは13~18.4%を掲げていました。
札幌市宮の森2ndを例に挙げると、ファンド側は目標募金金額の1%にも満たない額しか出資せず、のこりの99%を投資家から集めていました。ファンド側の出資額が少ない代わりに、不動産の売却や運用で損失が出ると出資者の負担となり元本割れのリスクが高い商品となっていました。その代わりに利回りは15.9%とあり他の不動産クラウドファンディングの商品よりも非常に高く設定されています。
札幌市宮の森 隈研吾&Knight Frank社 ファンド一覧表 | ||||
ファンド名 | 利回り | 募金金額 | 償還予定日 | 延期後償還予定日 |
札幌市宮の森1st | 18.4% | 7億4900万円 | 2025/1/31 | 償還済み |
札幌市宮の森2nd | 15.9% | 5億5500万円 | 2025/2/28 | 2025/8/29 |
札幌市宮の森3rd | 13% | 3億2000万円 | 2025/4/30 | 2025/8/29 |
札幌市宮の森4th | 13.8% | 6億8500万円 | 2025/5/30 | 2025/8/29 |
しかし、3月7日にヤマワケエステートから運用終了後の償還延期が発表され、2nd~4thの償還期限が延長されることが明らかになりました。とりわけ2ndについて、投資家にこの延期が伝えられたのが償還日前日の2月27日であり、償還を期待していた投資家から突然の延期発表にたいして不信感を抱かれています。
これに対して、ヤマワケエステートは物件の購入予定者が売買契約に対して購入の意思を強く示していたが契約目前で締結に至らなかったため延期せざるを得なかったと説明しました。
親会社でも不信感
ヤマワケエステートを運営するヤマワケエステート株式会社の親会社である株式会社REVOLUTIONでも株主優待を廃止し投資家が不信感を募らせています。
同社は、2024年10月に株主優待制度を新設すると発表し、年間12万円相当の「QUOカードPay」を贈呈する予定でした。
しかし、同社は2025年3月11日に経営環境の変化や財務状況を総合的に勘案した結果、優待制度を継続することが困難として、株主優待廃止を発表しました。一度も実施されずに廃止、さらには同会社の役員が株式を大量売却したということから投資家からは失望や怒りの声が上がり、株価も大きく下落しました。
今回のヤマワケエステート株式会社の償還日延期と株式会社REVOLUTIONの優待廃止はほぼ同時期に起きていること、さらに両社は深い関係があるなど今後市場の中でどのような動きをしていくのか投資家から注目されています。
うまい話には理由がある
ヤマワケエステートの不動産クラウドファンディングと関連会社REVOLUTIONの株主優待廃止について今回は特集しました。どちらも高利回りとなっており、投資家からは魅力的な商品に見えますが、今回の件のように投資家が結果的に損をするような可能性もあることが確認できました。
高利回りの投資商品全てが今回のように投資家に不信感を募らせる事例が発生するわけでありませんが、高利回りに設定されるにはそれなりの理由があるという事も気を付けながら投資商品を選別する必要があると思います。
出典:楽待