札幌の南区にある民間動物園のノースサファリサッポロ。札幌市はノースサファリサッポロの運営会社である有限会社サクセス観光へ建物の撤去を命じる「除却命令」を発することを検討するとして今年の2月に一斉に報道が始まりました。
このノースサファリサッポロは市街化調整区域に無許可で建築したり、土地を取得した際に届け出を行わなかった「国土利用計画法」違反や、事前の届出を行わないまま水道管の延長工事を実施した「市の水道事業条例」にも違反している事が分かりました。
この動物園は2005年7月にオープンをしています。札幌市はオープン前の2004年10月にはこの違法状態を確認していたが、動物園側は違法な状態でオープンしたことになります。
当初は10棟ほどだった建築物は拡張が繰り返され、現在は156棟にまで増えています。20年にわたって札幌市は違反状態の指摘を文書や口頭を合わせて17回指導をしているにもかかわらず対応せず、フードコートを無許可で営業する食品衛生法違反、動物と一緒に宿泊することができるグランピング施設を無許可で運営していた旅館業法違反などの問題もありました。これらの違反は現在解消されていますが“これ以上見逃せない”という事で最終的に「除却命令」発動を検討するということを公表するに至り、報道で大きく取り上げられました。
市街化調整区域とは
このノースサファリサッポロが建設されている市街化調整区域とは原則として無秩序な開発を防ぐために住宅や商業施設などの建築は認められていません。
このノースサファリサッポロ以外にも、今回の報道で東区にあるライブハウスも同様に無許可で建築し営業をしていましたが、現在は休止中。手稲区のアパート6棟は市の除却命令が出されたが今も入居者を受け入れ続けています。
逆に、農家や漁師などの家や周辺居住者の利用に公益上必要な物品の販売する店舗、危険物の保管や処理施設などは自治体に申請をする事により建築する事ができることもあります。
過去に札幌市は4000件以上の違法建築を指導してきましたが、実際に撤去されたのは1件だけです。
なぜこのような無許可建築が増えるのかというと「許可が必要な事を知らない人が建ててしまう」「知っていても無視して建てるケースがある」「行政の対応がバラバラで統一されていない」という理由が挙げられます。
実際に厚別区にある自動車整備工場については「札幌市は除却命令」「北海道運輸局は営業許可」「市の別部署が解体業も許可」など、行政側の対応がバラバラなことも問題視されています。
札幌市の対応として、除却命令は出せるが実際に命令がでたケースはごくわずかで、違反者が無視しても、強制撤去(行政執行)されたケースは1度もないといいます。
今でも札幌市には3000件以上の無許可建築があり、やった者勝ちの状態が続いていると報道各社は伝えています。今の法律では無許可建築を防ぐのは難しいですが、今回のノースサファリサッポロが大きな問題となった事で規制が厳しくなる可能性があります。
また、札幌市は既に建築されている市街化調整区域にある車庫や物置など4000棟へ対しても、今後、撤去命令を出すなどの措置を講じると報道されており、札幌市内の建築業を営む業者は市街化調整区域に資材の土場などを所有していることが多く、影響は計り知れないと考えられています。
ノースサファリサッポロのその後
ノースサファリサッポロを運営するサクセス観光は3月10日、突如としてノースサファリサッポロを9月末に閉園することを発表。これは札幌市側も事前には聞いていない事でした。連日の報道により動物園に対する風当たりは日に日に厳しくなり、会社側は園の運営を続けることが難しいと判断したと思われます。
4月23日には札幌市が立ち入り検査を実施、3月までに他の動物園に全体の3分の1に相当する210匹を他の動物園などに移動させたことを確認しました。また、4月から9月までの間に72匹の移動を予定していましたが、既に40匹が移動済みであるという確認が取れました。
しかし、ライオンやトラなど、特定動物や高齢の動物など全体の半数335匹については移動の目処が立っていないそうです。
運営会社は既にミーアキャットを飼育していた施設などの建物は取り壊しが終わっており、残りについては2029年までにすべてを撤去する計画を札幌市側に提出しています。
市街化調整区域は一般の方にはあまり、なじみがないものだと思います。今までは比較的グレーゾーンで、銀行の融資を受けないで建築するのであれば、前記の通り「建てたもの勝ち」で、強制的に取り壊しになる事はありませんでした。
しかしながら、今回の騒動で大きく取り上げられたことにより今後は規制が強化されるものと思われます。