増加傾向の犯罪件数
止まらない物価高騰、先行きの不透明さなど社会への不安の増大により日々の犯罪件数は増え、犯罪手法は複雑化しています。闇バイトという犯罪のハードルを下げて犯罪を助長する事がニュースで取り上げられていますが、それ以外にもAI技術を組み合わせた新しい手法の詐欺と未然に防ぐための手段を特集していこうと思います。
進化する詐欺
詐欺の代表例といっても過言ではないオレオレ詐欺などの「特殊詐欺」ですが、近頃音声AIを応用した「詐欺」が海外で報告されています。一般的な「詐欺」は認知機能が衰えてしまった高齢者を狙い撃ち、電話先の人物が本当に自分の知っている人物かどうかを認識する前にお金を騙し取る手法です。
被害に遭ってしまった方々の半数以上が「本人の声だと思っていた」理由で騙し取られたという統計があります。逆に「詐欺」を回避できた方々の半数が「知っている人物と声が違う」という理由です。つまり「声」が詐欺かどうかを見抜けるかの分岐点となっているのです。
しかし、「オレオレ詐欺」の声が本人の声と完全に一致するとどうなるでしょうか?
TBSのニュースがYouTubeで紹介されています。文章で伝えるよりも実際にどんな技術なのかを耳で体感していただいたほうが早いと思います。この技術によって声は本人、中身は全く別人でのなりすましが可能となります。
日本国内では技術が紹介される程度でまだこの技術を悪用した被害が出ていませんが、海外では既に詐欺が発生しています。イギリスでは、詐欺師が親会社の最高経営責任者を装い、子会社の責任者に対して22万ユーロ(日本円で2600万円)を送金するように要求しました。子会社の責任者が振り込んでしまった後に、詐欺師からさらに送金を要求する電話が来ましたが電話番号が違う国の番号だったため2回目の送金を回避することができました。子会社の責任者の証言によると詐欺師の声、口調、なまりがほぼ本人と一致していたため信じ込んでしまったそうです。

現状個人が対策できることは限定的
民間人だけでなくもはや企業や政府をも標的としているAI技術を応用した詐欺を見抜くことは難しいでしょう。現時点では1人の声をAIに学ばせるのに膨大な量の本人の音声と作業を要するため限られた専門家にしか作成できないという点が救いとなっています。しかしながら、どんな新興技術も日々進歩しますのでいずれ誰でも容易にこの技術を使用できる時代が来ると思われます。
そこで個人ができる対策方法を紹介していきます
- かかってきた電話は全て留守番電話を通してから聴く
電話を通して騙す手法の詐欺全般に有効なのは受話器を取らないように全て留守電にすることです。詐欺師と一度でも対話できる状況になってしまうと騙される危険性が非常に高くなるため相手の土俵に立たないように回避することが重要です。留守番電話を挟むことで直接対決を避けられるため冷静に判断ができます。ただし、デメリットとして緊急の連絡が必要な人の電話も留守番電話にかかってしまうため、対応が遅れてしまう点があります。
- 少しでも違和感を覚えるとき
違和感を探すことも回避するきっかけとなります。例えば不審な電話番号である、自分が知っている本人とは言葉遣いがまるで違うなどの点です。前述したイギリスの詐欺の件でも電話番号が違うことに気づいたためにさらなる被害を防ぐことができました。
- 周囲の人に相談
最後の関門としては本人に直接確認する、又は周囲の人に相談するのが最大の防御となるでしょう。被害者を孤立させて周りの人間を頼らせないのも犯罪者の常套手段ですので身近な人に相談することによって回避できる可能性があります。
被害に遭う可能性は誰にでもあります
未然にこうした詐欺を防ぐための一歩は興味関心を持つことだと思います。とはいえ犯罪手法も刻一刻と変化し続けるため全ての情報を網羅するのも厳しいでしょう。そのため自分は大丈夫、自分は騙されないという慢心を持たないだけで被害に遭う確率は減ると思います。AI技術が組み合わさった「詐欺」も海千山千の詐欺の手法の中のただの1つであるため、私達が知らない手法の詐欺に狙われているかもしれないという心構えが大事だと思います。
TBS NEWS DIG Powered by JNN(2023.5.29).“スゴすぎる”音声生成AI 実際に使ってみた!将来の活用方法は?悪用されるケースも続々と…【Nスタ解説】.YouTube