止まらぬ建築費高騰

不動産投資

建築資材・労務費高騰

2021年頃に始まった「ウッドショック」を皮切りに、建築資材の高騰は建設業界全体に深刻な影響を与え続けています。そして、2025年に入ってもその高騰傾向は続いており、複数の要因が複雑に絡み合い、価格上昇に拍車をかけています。

大きな理由としては以下の3つの要因によるところが大きいです。

1.「ウッドショック」と「アイアンショック」の高止まり

新型コロナウイルスによる世界的な住宅需要の高まりを受け、木材や鉄鋼製品の供給が逼迫し、価格が急騰しました。その後、価格の急騰自体は落ち着いたものの、依然として高水準を維持しています。特に鉄鋼については、中国やインドでの需要増加、原料である鉄鉱石の価格上昇、さらには輸出規制の強化といった複合的な要因が価格を押し上げています。

2.物流コストの上昇と混乱

ウクライナ情勢の長期化や国際的なコンテナ不足により、海上輸送費が高止まりしています。これにより、多くの輸入資材はコスト増加を避けられず、日本国内の価格にも直接的な影響を及ぼしています。

3.円安の進行

日本経済における円安は、輸入に大きく依存している建築資材にとって致命的な要因です。円安が進むことで、海外からの調達コストが大幅に増加し、それがそのまま国内の資材価格に転嫁されています。

さらに建設業界では、団塊の世代が75歳以上となり、大量のベテラン技術者が引退する「2025年問題」が課題となっています。これにより、労働力不足がさらに深刻化し、人件費の上昇を招いています。資材費だけではなく、労務費の高騰も建築コスト全体を押し上げる要因となっています。つまり、高くなる要素はあっても低くなる要素はないという状況です。

2021年と比較すると

下記QRコードより日本建設連合会HPに繋がります。

日本建設業連合会の資料によると2021年1月と2025年7月では資材価格がおおよそ37%アップしています。(右図参照)特に、板ガラス83%、配管用炭素鋼鋼管73%など、物によっては大幅に値上がりしています。

さらに、政府の賃上げの方針や労務単価の引き上げなどを受けて、建設現場で働く建築技能労働者の賃金も22.9%上昇しています。

では、実際にどのぐらい建設価格が変わったかというと、材料資材割合を50~60%、労務費率30%と仮定すると、この54ヶ月で建築資材の高騰・労務費の上昇の影響により仮設費・経費などを含めた全建設コストは、25~29%上昇したと公表されています。

例えば2021年時点で100億円の建設工事では、労務費+原材料費80~90億円の原価だったのが2025年の現在では105~119億円に上昇。ほとんどの工事について、2021年当時の価格設定では材料費と人件費も賄えないという事が分かります。そのため、公共工事など予算が合わず建て替えが中止、延期といった事が発生しています。

さらに資材価格高騰とは別に、設備関係や一部建設資材において納期遅延が発生し、工期への影響が出ています。要因は様々ですが今までの様に安く早く施工するということができなくなる事に留意する必要があります。

建築費高騰で賃貸に光明

筆者が札幌オーナーズに入社した18年前は3,500万円~、場合によっては3,000万円でも戸建が建てられたものですが、現在では建築費高騰により札幌市内で戸建を建築しようとすると最低でも4,500万円以上かかります。これをフルローンで毎月返済しようとすると金利1.2%、35年ローンで約13万円となります。住宅ローンの返済負担率の目安は年収の25%程度ですので毎月50万円(年収600万円)以上の収入がないと家計を圧迫します。さらに35年の返済期間中には設備の交換や外壁の塗装など、追加のメンテナンス費用が数百万円単位でかかる事もあり、戸建や分譲マンションは諦めて賃貸を選択する層も増えてきたように感じます。

そういった層の取り込みをするべく、新築の賃貸物件は部屋数が取れる(=家賃収入多くなる)1LDKではなく2LDK以上のファミリータイプが増えています。物件購入はしないものの、ある程度の収入がある世帯向けがターゲットとなり、家賃が1~2割高いハイクラスであっても人気のようです。

また、築年数が経過した物件についても台所・風呂・トイレなど全てリニューアルし付加価値を付けることにより、従来よりも賃料を高く設定しても決まる傾向も出てきました。戸建や分譲マンションが高くなったがために、賃貸へ流れてくるお客様をいかに集客するかが今後の賃貸運営に大きく影響するものと考えられます。